記事・読み物
あんこのおやつ!「播磨のあんこ七変化」特集
小豆と砂糖。素材はとてもシンプルなのに、その表情は驚くほどに豊かなあんこ。ひと口にあんこと言っても、小豆の種類や炊きかた、組み合わせる素材などによって味わいはさまざま。昔ながらのほっこりあんこから和洋の垣根を越えたおしゃれあんこまで、何度でも食べたくなるおやつを紹介します。あんこ好きさんへの手土産にもおすすめですよ。(神姫バスでも巡れます。※一部店舗除く)
1.ひと口サイズの自然の恵み 重次郎のおはぎ『穂 -SUI- 』
手のひらにのせて愛でたくなる、つややかなおはぎ『穂-SUI-』。佐用町の農業法人「みかづきe」が姫路城のお膝元で営む和菓子店「重次郎」の人気商品です。自前の減農薬もち米や無農薬の大納言小豆、大豆を使って一つひとつ手作りしています。
すこやかな土に育まれた小豆の風味を損ねないよう、水分や砂糖の量を調整しながら炊き上げるあんこは、こっくりした味わい。半殺しのもち米をあんこで包んだ「つぶあん」は、もち米のほどよい弾力と塩加減が小豆の滋味を引き立てます。ひと口サイズなので、子どもからお年寄りまで食べやすく、いろいろな味を試したい人にもうれしいですね。
佐用名産もち大豆の香ばしい「きな粉」や岡山県産黒米を混ぜた「古代米」など定番6種類に加え、抹茶やさつまいも、クリームチーズなど季節の味も。おはぎと並んで人気の小餅『恵-MEGUMI-』やジェラート、夏季限定のかき氷なども制覇したいメニューです。
大通りから少し入った路地にあるため、静かにゆったりと過ごせる重次郎。2号店となる佐用町の「平福茶房」でも同じ商品が購入できるので、米や小豆のふるさとを訪ねてみるのもいいですね。
おいしい食べ方◎
暑い時期は“冷やしおはぎ”がおすすめ。冷やしてもかたくならず、もっちり食感を楽しめます。
重次郎-JYUJIRO-
住所 姫路市本町68-170-14大手前第一ビル1階
電話番号 079-287-6882
営業時間 10:00~16:30/休前日は10:00~17:00
定休日 火曜日
HPはこちら
駐車場 なし(近隣のパーキングを利用)
★神姫バス 姫路駅(北口)乗車~姫路城大手門前(西方面)から徒歩1分
神姫バス時刻表
2. 神社で頬張るふくよかな味 URUMI gallerycafeのどら焼き
鳥居をくぐった先で待っているのは、ふっくら生地にほどよい甘さの粒あんをサンドしたどら焼き。加西市の八王子神社境内地に佇む「URUMI gallerycafe」の看板商品です。
「大人も子どもも安心して食べてもらえるものを」と素材を厳選し、なかでもあんこの小豆は、オーナー夫妻がそのおいしさに惚れ込んだという地元酒米農家「ten」の丹波大納言小豆を使用。農薬を使わずに育てられた小豆の旨味を活かしながらも、しっかり甘みが感じられるよう、香り豊かな素焚糖(すだきとう)で絶妙な甘さに仕上げています。
白玉粉をブレンドして焼いた生地は、注文を受けてから蒸すことでもっちりとした食感に。できたてを頬張ると、ひと口でそのふくよかな味のとりこになります。
あんこをシンプルに楽しめる『プレーン』のほか、季節の素材を組み合わせたどら焼きもおすすめ。取材日は『豆腐白玉』と『クリームチーズとあんず』でした。また、夏はかき氷、冬はぜんざいが登場し、四季を通してあんこ好きの心をくすぐります。
家具職人でもあるオーナー夫妻の作品やセレクト商品が並ぶ店内は、神社という立地も相まって日常とはひと味違う雰囲気。どら焼きとともにその雰囲気も味わってみてください。
おいしい食べ方◎
冷めると生地とあんこがしっとりなじみ、できたてとはまた違ったおいしさに。手土産にもぴったりです。
URUMI gallerycafe
住所 兵庫県加西市田谷町1265(八王子神社境内地内)
電話番号 ー
営業時間 10:00~16:00
定休日 木・金・土曜日
instagramはこちら
★加西市コミュニティバス 国正線「宇仁小学前」から徒歩3分
3. 米麹と小豆がヘルシーあんこに変身!夢蔵の米粉ドーナツ『麹あんこ』
多可町でひそかに人気を集める一風変わったあんこのドーナツ。あんこはあんこでも、砂糖を使わないヘルシーな“麹あんこ”なのです。作っているのは、道の駅敷地内にある「おむすびキッチン夢蔵」のお母さんたち。
多可町は酒米の王様と呼ばれる山田錦発祥の地で、夢蔵では地元で栽培された山田錦の米粉を使った特産品開発に取り組んでいます。そのひとつが米粉の焼きドーナツ。冷めても米粉特有のもっちりした食感が楽しめるよう何度も改良を重ねた力作です。ブルーベリーなどの自家製ジャムを生地に混ぜた4種類に加え、この春から『麹あんこ』が仲間入り。通常のあんこは砂糖で甘みをつけますが、麹あんこは小豆を米麹で発酵させて甘みを出したもの。店の名物である甘酒に山田錦米麹を使っていること、主役の小豆も地元で賄えることから、麹あんこに着目しました。麹をたっぷり加えることでやさしくも深みのある甘さに。ドーナツに練り込むと、鼻に抜けるバターの香りと好相性。ふわっと軽い口あたりで老若男女に親しまれています。数に限りがあるので事前にお問い合わせを。
地場産の安心安全な食材で作るお弁当なども販売しているので、田舎の新鮮な空気と懐かしい味わいを満喫して。
おいしい食べ方◎
オーブントースターで2、3分温めると、焼きたてのようなふわふわ感が楽しめます。
おむすびキッチン夢蔵
住所 多可郡多可町中区天田340-1
電話番号 0795-32-4477
営業時間 9:00〜16:00
定休日 毎月第3水曜日(変更の場合あり)
Instagram はこちら
★神姫グリーンバス「鍛冶屋南」から徒歩9分
神姫バス時刻表
4.小豆の可能性と手仕事を未来へつなぐ 手仕事喫茶『御座候』の『赤ロール』
みずみずしいあんこがたっぷり入った手焼きの味が幅広い世代に愛される「御座候」。書写山の麓にこの春オープンした喫茶では、焼きたての赤あん・白あんの御座候をはじめ、赤と白のケーキを提供しています。
『赤ロール』は、小豆の濃厚な風味と色を楽しめるロールケーキ。生クリームと小豆ムースを巻き込んでいるほんのり赤い生地が最大の特徴です。生地に使われているのは、北海道十勝産小豆を丸ごと粉にした独自製法の「小豆粉」。あんこだけではない、小豆の新しい可能性を感じます。
赤ロールとともに、ハンドドリップで淹れる『赤ブレンド珈琲』をどうぞ。コクのある苦味が小豆の上品な甘さを引き立てます。同じ小豆粉を使った商品に、全粒粉のザクザク食感が小気味よい『赤タルト』や打ち菓子風の『豆紡(まめつむぎ)』も。
“手仕事”をコンセプトにした趣ある空間づくりにも着目して。お菓子のうつわから、庭園や型染の暖簾、椅子や荷物置きのいかごに至るまで、随所に手仕事のあたたかみが感じられます。
あん作りも手仕事。いかに豆の風味を損なわずに食べる人の元へ届けられるか――そんな飽くなき探究心から生まれたお菓子を、くつろぎの空間で召し上がれ。
おいしい食べかた◎
お菓子とうつわの組み合わせも楽しんで。取材日は、沖縄の「やちむん」のお皿と、島根の「湯町窯(ゆまちがま)」のコーヒーカップでした。
手仕事喫茶『御座候』書写山麓店
住所 姫路市書写1199-3
電話番号 079-267-1117
営業時間 喫茶 10:00~18:00 ランチ 11:00~14:00
定休日 火曜日
HPはこちら
★神姫バス 姫路駅(北口)乗車 バス停「書写郵便局前」から徒歩8分
神姫バス時刻表
5. 五感で楽しむ和と洋の融合 あまねやの『WAYOUパフェ』
見てうっとり、食べてうっとり。気鋭の和菓子店「甘音屋」が運営する古民家カフェ「あまねや大津長松店」の『WA YOUパフェ かさね(茶)』。その名のとおり、和と洋の素材を幾層にも重ねたパフェです。
フタのようになっているのは、抹茶アイスがのった最中の皮。グラスの中では、抹茶の生チョコとイチゴが入った抹茶エスプーマ、三笠生地、白玉、あんこ、抹茶ゼリー、バニラアイス、抹茶ソースがお行儀よく層になっています。
同じ抹茶でもアイス、エスプーマ、ゼリーと食感が異なり、食べ進めるごとに味の変化と調和が楽しめて最後まで飽きさせません。北海道産大納言小豆を粒の形をしっかり残して炊き上げたあんこは、上品な甘さ。小豆本来の味を最大限に引き出すため、吸水から煮詰める段階まで細心の注意を払っています。パフェのバランスの取れた味わいには、この上品なあんこが一役買っているのかもしれませんね。
“音”をテーマにお菓子を作り、訪れる人をもてなす甘音屋。隠れ家のようなカフェでは、時間を忘れてゆったり過ごせます。同じパフェシリーズの『みたらし』や夏限定のかき氷など、ここでしか食べられない和スイーツが充実。和菓子の店頭販売もあるので、ぜひ大切な人への贈りものに。
おいしい食べかた◎
小豆を炊く音を想像しながらあんこをいただくのも、これ一興。菓銘の響きにも注目してみて。
あまねや大津長松店
住所 姫路市大津区長松424-1
電話番号 079-239-1230
営業時間 販売10:00~18:00 カフェ12:00~18:00(L.O.17:00)
定休日 水曜日
駐車場 あり
HPはこちら
6. おなかも心もホクホク満たされる やきやきやのたい焼き
JR加古川駅近くの路地を歩いていると、香ばしい香りが漂ってきます。その香りに誘われてたどりついたのは、地元で20年にわたり愛されるたい焼き店「やきやきや」。2代目店主の宮脇さんが先代の味を引き継ぎ、「安全安心のおいしいたい焼きを食べてもらいたい」と心をこめて焼いています。焼きたてにかぶりつくと、パリッと香ばしい皮と適度な甘さのあんこが口の中でホクホク溶けあいます。
あんこには北海道産の減農薬小豆を使用。複数ブレンドの砂糖を入れることで、あっさりしたなかにも深みのある味に。焼いた時にしっとりするよう柔らかめに炊き上げます。
国産飼料で育てられた鶏が産む地元「オクノ」の卵を使った皮は、サクサクとした薄めの生地。まわりにはみ出た“ハネ”はパリパリ食感が楽しく、注文時に切るかどうか聞いてくれるので、ぜひ「ハネつきで!」と頼んでみて。
気温や湿度によって焼き方や小豆の炊き方を微調整し、毎日変わらない味を作り上げる宮脇さん。こうした探究心とお客さんへの心配りがおいしさの秘訣なのでしょう。頭からしっぽの先までたっぷりつまったあんこのごとく、食べる人のおなかも心も満たしてくれます。
おいしい食べ方◎
温めるときはオーブントースターで。あんこの甘味を味わうなら、ほんのり温かいくらいが◎。
鯛焼工房やきやきや
住所 加古川市加古川町篠原町59
電話番号 079-427-5176
営業時間 10:00~18:00
定休日 月・火曜日 ※夏季休業あり
駐車場 なし
7.伝統製法が生む素朴で極上の味わい 末廣堂の千種羊羹
宍粟市千種町で明治から続く和菓子店「末廣堂」。創業以来親しまれている名物『千種羊羹』は素朴ながらも極上の味わい。その味を気軽に楽しめるのが、上郡町にある緑に囲まれた茶房「末廣堂 光都苑」です。
つぶ・こし・白小豆の3種類のうち根強い人気を誇るのは、小豆そのものの味を堪能できる「つぶ羊羹」。表面はつややかで、口に入れると、豆の粒感は言うまでもなく芳醇な香りと上品な甘さがたまりません。
使用する小豆は、皮が柔らかく風味豊かな北海道十勝産の「紫(むらさき)」。農園まで指定した高級品種です。特徴の異なる数種類の砂糖をブレンドし、あっさりとやさしい仕上がりに。昔ながらの製法を守り、添加物は一切使用しません。
羊羹のお供にはコーヒーがおすすめ。和菓子とコーヒーの組み合わせは一見意外に思えますが、“豆”が重要という共通点が。小豆同様厳選したコーヒー豆を自家焙煎し、注文ごとに挽きたてを提供。深煎りのスッキリとした苦味が羊羹の甘さによく合います。
香ばしい皮で粒あんをはさんだ『最中』や、発酵バターを使った『あんクロワッサン』なども好評。伝統を継承しながら時代に応じて進化する末廣堂の“豆”の世界を存分に味わって。
おいしい食べ方◎
滑らかな舌触りの「こし羊羹」、希少な白小豆を使ったさっぱりとした甘さの「白小豆羊羹」との食べ比べも楽しそう。
末廣堂 光都苑
住所 赤穂郡上郡町光都2-27
電話番号 0791-58-1188
営業時間 7:30~17:30
(モーニング 7:30~11:00 ランチ11:00~)
定休日 年末年始、お盆
駐車場 あり
HPはこちら
★神姫バス「光都バスセンター」もしくはウエスト神姫「西播磨総合庁舎東」から徒歩3分
神姫バス時刻表
あんこ大好き!なライターさんからのメッセージ
「あんこ食べたい!」この記事を読んで、そう思っていただけたなら幸いです。
どのお店も、素材となる小豆からこだわってあんこを作られていますが、小豆には食物繊維やビタミンB群、ポリフェノールにカリウムなど体にうれしい栄養素がたっぷり。また、お祝いごとで赤飯を食べたりお彼岸におはぎをお供えしたりしますが、これは古来、小豆の赤色に魔除けの力があると信じられていたからなのです。こんなに小さな粒なのに、小豆ってすごいですよね。
甘いものが食べたくなったら、心に体に栄養満点のあんこのおやつを。播磨のあんこを巡って、あなたのお気に入りを見つけてくださいね。
(文・写真/ ながらいつこ)